2004年の発見当時、2029年に地球に衝突する可能性が示唆された小惑星99942「アポフィス(Apophis)」が、静かに地球のそばを通り過ぎようとしています。
今回の最接近は、地球と月の距離の約44倍離れたところを通過しますが、2029年には地球と月の距離の10分の1の距離まで迫ってきます。
計算ではその後の2036年の最接近まで、地球との衝突の可能性はないとされていますが、2068年の最接近時には、僅かながら地球との衝突の可能性が残っています。
より精密な予測を行うべく、世界中の天文学者は、今回と2029年の最接近時の観測によりより多くの情報を収集しようとしています。
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小惑星アポフィスは、サイズが約340mと、東京タワーとほぼ同じくらいの大きさの地球近傍天体(NEO:Near Earth Object)です。
地球近傍天体のなかでも、地球に衝突する可能性が高く、衝突時の影響が大きいとされる「潜在的に危険な小惑星(PHA:Potentially Hazardous Asteroid)」に分類されています。
また軌道要素の分類では、地球より小さな軌道長半径を持つ「アテン群」に分類されていますが、2029年の地球との大接近により軌道が変化し、地球より大きな軌道長半径を持つ「アポロ群」に変わると予想されています。
地球近傍天体が地球に衝突する確率と衝突した際の予測被害状況をレベル0からレベル10までで表す「トリノスケール」というのがありますが、アポフィスはトリノスケールのレベル4が適用されたことのある天体として知られています。
ちなみにレベル4の定義は、
Assessing Asteroid And Comet Impact Hazard Predictions In The 21st Century
(Level 4)
A close encounter, meriting attention by astronomers. Current calculations give a 1% or greater chance of collision capable of regional devastation. Most likely, new telescopic observations will lead to re-assignment to Level 0. Attention by public and by public officials is merited if the encounter is less than a decade away.
(天文学者の注目に値する接近遭遇。局所的な破壊をもたらす衝突の可能性が最新の計算で1%以上。新たに望遠鏡による観測をすることでレベル0に変更される可能性が高い。遭遇が10年以内なら、国や公的機関による注意に値する。)
Torino Impact Hazard Scale/NASA
となっており、当時は衝突の確率1.6%と計算されていたようです。
なお現時点でトリノスケールのレベル1以上の天体はありません。
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8年後の2029年4月13日のアポフィス大接近時には肉眼で見えるようになるようで、大きな話題になりそうです。
残念ながら日本からは見えないと思われますが、オーストラリア上空から西に進み、インド洋、アフリカの赤道を通過して、大西洋から米国上空を抜けていくものと思われます。
最接近時の地球からの距離が31,643kmと予想されており、人工衛星の静止軌道(高度35,786km)の内側に入り込んでくることになります。
NASAが作成したアニメーションで、2029年4月13日のアポフィスの軌道を確認できます。
青い点が人工衛星を表していますが、ぶつかりそうでヒヤヒヤしますね。
なんか今からドキドキして来ました…
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以上、小惑星アポフィスの話でした。
今の所100年先まで、地球に衝突する可能性が高い天体は発見されていないので、心配する必要はなさそうです。
まだ発見されていないだけという話もありますが、心配しても仕方ありませんね…