2016年4月1日より電力小売の全面自由化がスタートし、一般家庭や商店も電力会社を選べるようになりました。また、ガス小売も2017年4月1日から全面自由化されています。
筆者は割と慎重なので、よく状況が分からない新電力にすぐに飛びつくようなことはしませんでした。
しかし電力全面自由化から4年以上経過し、状況も落ち着いてきた頃かと思いますので、重い腰をあげて検討を始めることにしました。
電力全面自由化の経緯
これまで電力供給は地域ごとに独占事業者が集中管理する体制でした。つまり電気は地域の電力会社と契約するしか選択肢がありませんでした。
2011年の東京電力福島第一原子力発電所事故をきっかけに原子力利用が停滞し、電力供給に不安を抱える状況に陥った結果、地域を超えた効率的な供給や、競争の促進による電気料金の抑制、多様なサービスの提供が強く求められるようになりました。
2013年に閣議決定された「電力システムに関する改革方針」により広域系統運用の拡大、小売・発電の完全自由化などに取り組むことが決まり、何回かの電気事業法改正を経て2016年4月1日より電力小売の全面自由化がスタートしました。
電力供給の仕組み
電力は「発電部門」「送配電部門」「小売部門」の3つの部門に分類されます。
発電部門
電気を作る部門。水力発電所、火力発電所、原子力発電所、太陽光発電所、風力発電所、地熱発電所などを運営します。
送配電部門
発電所から消費者まで電気を届ける部門。送電線、変電所、配電線などの送配電系統を運営します。
系統全体の電力バランスを調整し、電気の安定供給を図る機能を持ち、定期点検やスマートメーターの管理もこの部門が行います。
この部門は従来の地域独占電力会社が継続して担当します。但し他部門に対して中立性を保つため、分社化されています。
小売部門
電力の調達、電気料金の設定や消費者との契約手続きなど、消費者との窓口となる部門。2020年7月20日現在、664事業者が登録されています。
消費者は小売業者を自由に選択できるので、料金体系やプラスアルファのサービスで差別化を図ろうとしています。
今回はこの契約をどうするかの検討となります。
なお万一小売業者が電力の調達に失敗して電力不足が発生したとしても、送配電部門が安定供給を保証することになっているので、消費者には影響がありません。但し小売業者にはペナルティが科せられますので、いずれ料金体系の見直しにつながる可能性もあります。
新電力会社のシェアと移行状況
電力・ガス取引監視等委員会の電力取引の状況によると、2020年3月時点での新電力会社のシェアは約16.1%でした。
また、全面自由化された2016年4月以降、新電力へ移行した件数は累積13,140,696件、新電力から戻した件数は累積573,905件、新電力を変更した件数は累積1,355,114件となっています。
ダブりを考慮せず荒く計算すると、新電力に変更した内の4.4%が元に戻し、10.3%が他の新電力へ移っていることになります。
普段電気を使っていて、電力会社のサービスを気にすることは滅多にないと思いますが、それでも4.4%が4年以内に元に戻しているという事実は、何を意味するのかよく考えてみたいと思います。
参考までに、新電力会社を2020年3月の販売電気量(低圧電灯)の多い方からリストアップしてみました。 (経済産業省 電力需要実績より)
No | 事業者名 |
---|---|
1 | 東京ガス |
2 | KDDI |
3 | 大阪瓦斯 |
4 | SBパワー |
5 | ENEOS |
6 | ハルエネ |
7 | 東邦ガス |
8 | ジェイコムウエスト |
9 | Looop |
10 | ジェイコム東京 |
11 | サイサン |
12 | オプテージ |
13 | HTBエナジー |
14 | イーレックス・スパーク・マーケティング |
15 | 東急パワーサプライ |
16 | PinT |
17 | 楽天モバイル |
18 | ジェイコム埼玉・東日本 |
19 | ジェイコム湘南・神奈川 |
20 | 北海道瓦斯 |
一旦まとめ
長くなったので、ここで一旦記事を分けます。
低圧電灯の順位ですが、法人向けの会社も入っています。
また、ガス、ケーブルテレビ、インターネットなど、既に家庭に入り込んでいる企業がやはり強そうです。
次は実際の電気料金がいくらになるのか、いくつか候補を選んで試算してみたいと思います。