首都圏の緊急事態宣言も解除されましたが、引き続き「新しい生活様式」の徹底が求められています。
第2波、第3波の襲来が予想される中で、外出時のマスク着用は、今後しばらくの間は当たり前の風景となりそうです。
しかし、聴覚障害者にとって、マスクが当たり前の世界はとてもつらいのではないでしょうか。
聴覚障害者が他とコミュニケーションを取る上で重要な方法として、口話(こうわ)手話というのがあります。
口話は相手の唇を読んで言っていることを理解し、口形を模倣して発音して相手に伝える手法です。
手話は、主に手指動作を使い相手とコミュニケーションを取る手法ですが、目、眉、口など顔の動きも重要な情報になります。
どちらも相手の言っていることを理解する上で口の動きが重要な情報となりますので、マスクで口が隠されている状態ではコミュニケーションを取るのことが困難になります。
最近の安倍首相の記者会見でも、手話通訳の人はマスクではなく透明のフェイスガードを付けていますよね。
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最近のYahoo!記事で、気になるものがありました。
トレーダージョーズというのは米国の食料品スーパーで、土産になるPB商品も豊富で日本人にも人気です。筆者も同社のチョコプレッツェルはお気に入りです。(しかもボリュームたっぷり)
記事は、聴覚障害者であるトレーダージョーズの従業員が、客とのコミュニケーションを取るためにした工夫について紹介しています。
彼は、通常は客の唇を読むことでコミュニケーションを取ることができます。
しかし客の誰もがマスクを着用し始めたため、上司と相談して安全で効果的にコミュニケーションを取る方法を検討しました。
まずは彼のTシャツを、「DEAF(聴覚障害者)」の文字とともに、表に「I READ LIPS(私は唇を読みます)」、裏に「PLEASE TAP ON THE SHOULDER FOR HELP(ご用の方は肩をたたいて下さい)」と印刷されたものに変えました。
そしてレジのアクリル製ガードにも同様の注意書きをし、コミュニケーションを取るためのホワイトボードも用意しました。
彼はこの工夫のお陰で再び客とのコミュニケーションが可能になり、安心したといいます。
この記事へのコメントも好意的なものが多く、マスクで覆われた世界での聴覚障害者のことを考えたことが無かった、という意見もありました。
筆者も全く同感で、この記事を読んで、コロナ禍に我々以上に苦しんでいる、聴覚障害を持つ方々のことを改めて認識しました。
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今は、コミュニケーションのために相手にマスクを外してもらうことは困難な状況です。
ホワイトボードを使って筆談するのも手ですが、共有のマジックペンを手に取ることも躊躇する人もいるでしょう。
例えば、スマホの音声入力などを使って、相手の言っている言葉をリアルタイムに文字にするツールを活用してみてはどうでしょうか。
世の中の人はまだ音声入力ツールに馴染みが薄いと思いますが、言語翻訳機能を使えば、日本語以外を話す人とのコミュニケーションにも使えますし、コミュニケーション補助ツールが当たり前になる日が来るかも知れません。
このコロナ禍で、リモート会議ツールが仕事の仕方を激変させようとしているように、色々なところでITツールなどを活用し、全ての人にとって住みやすい社会に変わって行くといいのですが。
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視覚障害を持つ方々に限らず、このコロナ禍で更に苦しい立場に追いやられている人々が多くいます。
ここでは工夫やツールの話をしましたが、一番大事なのは、自分が普段当たり前と思っていることが一部の人には当たり前ではないかも知れない、ということをいつも心に置いて、人にやさしく生きていくことだと思います。