2020年9月25日に第10回の新型コロナウイルス感染症対策分科会が開催されました。
その分科会で紹介され、その後の西村大臣の会見でも説明があった、東大の渡辺努先生と慶大の藪友良先生の共同研究について、ちょっと興味があったので調べてみました。
日本の自発的ロックダウンに関する考察
分科会で取り上げられた研究については「日本の自発的ロックダウンに関する考察(渡辺努・藪友良)」という論文で8月に公開されています。
この研究は、NTTドコモのスマホ位置情報データを利用して、人々のステイホームの度合いを示す指標を時系列で算出し、その行動変容を引き起こす要因の特定とその寄与度合いを分析したものです。
以下の図は東京都の例ですが、ステイホーム指標のうち、政府の要請が寄与したのは約4分の1であり、残りの4分の3は、日々発表される感染者数などの情報から人々が判断しているという結果でした。
論文によると、米国に於ける強制力のあるロックダウン施策の効果も同程度だったことが分かっているということです。
つまり日本政府の取った施策である、強制力のない自粛要請であっても、強制力のあるロックダウン施策と同程度の効果があったということですね。
ただ実際には政府の施策の効果は2割程度で、多くの国民は、自ら収集した情報に基づいて行動しているということになります。
すなわち、重要なのは「法的拘束力の強い措置ではなく、人々の行動変容を促す適切な情報の提供である」と論文は結論付けています。
外出自粛と新規感染者数との関係
ところで、人々のステイホームの度合いは、新規感染者数の増減と必ずしも一致しているわけではありません。
以下の図は論文に掲載されている、東京都のステイホーム指標(自粛率)と新規感染者数を重ねたグラフです。
グラフの期間は今年の1月から6月までですが、その後の期間についても分析を進めているようで、まだ情報は公開されていませんが、西村大臣の説明では、ステイホーム指標(自粛率)は6月の水準をその後も維持しているようです。
しかしご存知のように、新規感染者数は7月以降急上昇しています。
この7月以降の新規感染者数増加の要因については現在分析中ということですが、接待を伴う夜の飲食店など限られたケースでのクラスター発生が大きな要因として挙げられています。
さらには、ステイホーム指標では表されない、地域を越えた人の移動の影響についても、今後分析を進めるということです。
7つの感染リスクを高めやすい場面
第10回分科会では、クラスター分析の結果から、「感染リスクを高めやすい場面」として以下の7つを挙げています。
人の移動に関する分科会から政府への提言/第10回新型コロナウイルス感染症対策分科会
- 飲食を伴う懇親会
- 大人数や深夜におよぶ飲食
- 大人数やマスクなしでの会話
- 仕事後や休憩時間
- 集団生活
- 激しい呼吸を伴う運動
- 屋外での活動の前後
継続的に分析を続けているので、今後の分析結果次第で増える可能性もありますが、現時点では「新しい生活様式」に加え、これらの場面にも注意を払うことがリスク低減のポイントになりそうです。
情報リテラシーの重要性
国民は政府の施策だけでなく、自分で収集した情報をより重視して行動していると言うことは、けっして悪い傾向ではないと思います。
但しそれは、マスコミの流す情報の影響を受けやすいと言うことでもあります。
コロナ禍に関して政府が発信している情報はかなりのボリュームがありますが、逆に必要な情報にたどり着くのに苦労します。
ちゃんとウォッチしていれば、タイムリーに情報を掴むことができますが、テレビなどのマスコミの流す情報は、どうしても取捨選択や編集が入ってしまい、自分に必要な情報に偏りが生じます。
従って情報を受け止める方に対しても、適切に情報を収集し正しい行動に生かす情報リテラシーの高さが、これまで以上に問われていることになります。
まとめ
ちにみに筆者のブログ記事も、筆者の興味があることがらについて調べたり実践したりしたことを書いていますが、調査に当たってはなるべく一次情報を探って、情報ソースも提示するように心掛けています。
ブログ的にはアクセスが流れてしまう懸念があるので、外部リンクを貼るのは得策ではないようですけどね…