先日JAXAから「はやぶさ2」のカプセル地球帰還後の拡張ミッションについての説明がありました。
小惑星探査機「はやぶさ2」の目的は、小惑星「りゅうぐう」の探査及びサンプルリターンであり、今年の12月に地球帰還を果たす予定です。
地球帰還後の拡張ミッションとはどういうことでしょうか。
はやぶさ2のミッション
「はやぶさ2」は2014年12月3日に打ち上げられ、2018年6月27日に小惑星「リュウグウ」に到着して次のミッションを行いました。
- ドイツ・フランスの小型着陸機(MASCOT)の投下・表面探査
- 日本の小型ローバー(MINERVA-II)の投下・表面探査
- 小惑星表面へのタッチダウン・サンブル収集
- 衝突装置による人工クレーターの作成
- 人工クレーターへのタッチダウン・小惑星内部からのサンプル採集
そして17ヶ月間の滞在の後、2019年11月13日に小惑星を出発し、地球への帰途につきました。
はやぶさ2の帰還予定
「はやぶさ2」は今年の12月に地球に戻って来ます。
カプセルは、12月6日に、初代のはやぶさと同じオーストラリアのウーメラ地区に落下する予定です。
初代「はやぶさ」は、数々のトラブルを乗り越え、奇跡的にカプセルを地球まで届けることに成功しましたが、本体も一緒に大気圏に突入し燃え尽きました。
今回の「はやぶさ2」は、これまで順調に飛行を続けており、カプセルを切り離して地球に帰還させた後も余力(軌道制御能力)が残っています。
従って、カブセルの地球帰還で当初のミッションは完了しますが、そこから拡張ミッションとして別の天体の探査をスタートさせることを検討しています。
拡張ミッションの検討
「はやぶさ2」は、推進剤にキセノンを使ったイオンエンジンを搭載しており、合計で約66kgのキセノンを積んでいます。どうやら地球帰還後も半分以上のキセノンが残っているようで、故障さえなければ十分別の天体探査ミッションをこなせる余力がありそうです。
地球に戻って来た後、惑星スイングバイ(天体の引力を使って軌道や速度を変える航法)やイオンエンジンの残りの推進剤を利用して到達可能な天体を探ったところ、354の天体が見つかったそうです。
これらの候補から、運用成立性や科学的価値の観点で絞り込みをしたところ、10年前後で到達可能な「2001AV43」と「1998KY26」という2つの小惑星が候補として残りました。
ボクがカプセルを地球に届けたあとのミッション、名づけて拡張ミッションを検討中だよ!
— haya2kun (@haya2kun) July 22, 2020
リュウグウよりもずっと小さくてずっと速く自転する小惑星2つが候補だよー🛰1999 JU3にリュウグウって名前がついたみたいに、この星にも名前がつく日がくるのかな? pic.twitter.com/UNpjm2itGb
いずれの小惑星も、平均の直径が約30~40mと小さく(イトカワは約330m、リュウグウは約700m)しかも周期10分程度で高速自転しています。
高速自転する小型小惑星の探査は例がなく、前人未踏の領域として魅力的です。
しかも、数10mサイズの小惑星の地球への衝突は比較的頻度が高く、事前の発見も困難なため現実的な脅威となっており、このクラスの小惑星の探査は、地球防衛上の重要な知見が得られる可能性があります。
最終案は今年の秋頃までに選定される見込みということです。
まとめ
初代「はやぶさ」が地球への帰還を果たしたのは2010年6月13日でした。
数々の苦難を乗り越え戻ってきたはやぶさが、オーストラリアのウーメラ地区に落下するときの映像は目に焼き付いています。
日本中が感動した「はやぶさ」の物語から10年後、「はやぶさ2」はどんな成果を持ち帰ってくれるのでしょうか。
そして休む間もなく、更に過酷な10年の拡張ミッションに向かう「はやぶさ2」は、何となく不憫に思いますが…はたしてどんな物語が待ち構えているのでしょうか。