6月13日に打ち上げられた米国スペースX社のロケットFalcon9は、同社の衛星コンステレーション計画に基づく「スターリンク」の人工衛星58基を乗せていました。
58基の衛星は上空で分離し、低軌道上に配置されますが、その間、まるで銀河鉄道のような連続した光点が空を横切るのが見え、話題になりました。
今回はこのスターリンクの目的と問題点について考えてみたいと思います。
スターリンクとは何か
スターリンクとは、先日、米国としては9年振りとなる有人宇宙船の打ち上げに成功した、イーロン・マスク率いるスペースX社が計画する衛星コンステレーションのことです。
コンステレーションは「星座」という意味ですが、軌道上に複数の衛星を配置し、協調動作させてひとつのシステムとして機能させるものを衛星コンステレーションと呼んでいます。
衛星測位システムのGPSや日本の「みちびき」なども衛星コンステレーションの一種ですね。
スターリンクはグローバルな低遅延高速インターネットアクセスの提供を目的としていますが、軍事や科学用途での販売も計画しているようです。
スペースXは今年に入って月一回のハイペースでスターリンク衛星を打ち上げており、既に約600基の人工衛星を軌道に投入しています。
最終的には12,000基もの人工衛星を打ち上げる予定といいます。
同様なものに、イリジウム、グローバルスターなどがありますが、いずれも衛星数は二桁に留まっています。
いかにスターリンクの規模が飛び抜けたものかが分かりますね。
スターリンクの問題点
人工衛星の太陽電池パネルなどは太陽光を反射するため、地上の天文台などからの観測に支障が出る可能性があります。
12,000基で構成する衛星コンステレーションが完成すると、地上から見ると常に約200基の衛星が上空を横切っていることになると予測されています。
そこで日本の国立天文台などは、スターリンクなどの巨大衛星群による天文観測への懸念を表明しています。
通信衛星群による天文観測への悪影響についての懸念表明 | 国立天文台
これらの批判を受け、スペースXでは急遽、人工衛星を反射しにくい色に塗ったり、サンバイザーを設けたり、地上に反射しない角度に体勢を変えるなどのテストを繰り返しているようです。
宇宙観測の未来
人工衛星による地上からの天文観測への影響は、技術開発によりある程度取り除くことは可能だと思います。
ですが、観測精度が上がるにつれて、やはり影響が無視できなくなってくることも予想されます。
一方で、人工衛星からの天文観測も以前から行われています。
有名なハッブル宇宙望遠鏡は既に30年の歴史があり、アップグレードを繰り返し、いまだに現役として活躍しています。
At the end of their lives, Sun-like stars shed layers of hot gas. To investigate how these ethereal clouds develop, Hubble took new, colorful images of two nearby planetary nebulae, including this picture of the Butterfly Nebula. 🦋
— Hubble (@NASAHubble) June 18, 2020
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日本でも「すざく(X線天文衛星)」「あかり(赤外線天文衛星)」「ひので(太陽観測衛星)」「ひさき(惑星観測衛星)」などの宇宙観測衛星を打ち上げていますが、一部を除いて既に寿命を迎え、今は多くが機能を停止しているようです。
ハッブル宇宙望遠鏡は来年にも後継となる宇宙望遠鏡の打ち上げが予定されていますが、宇宙望遠鏡は打ち上げと保守に膨大なコストが掛かることがネックなんですね。
まとめ(含む妄想)
スターリンクの推進により、世界中の天文学者から白い目で見られかねないイーロン・マスクですが、天文観測への悪影響を低減させることは当然として、逆に天文学者を味方に付けるような戦略を重視してほしいと思います。
例えばスターリンク衛星の背中に小規模な観測装置を乗せて、地球軌道上に巨大な分散型観測基盤を構築し、天文学者に開放するとか…(もちろん筆者の妄想です)
大胆な発想と価格破壊により宇宙ビジネスの拡大を進めるイーロン・マスクとスペースXは応援したいと思っているので、是非今回も困難を乗り越え、宇宙観測分野の発展にも貢献して頂きたいと筆者は期待しています…