横浜市は来年の『令和3年「成人の日」を祝うつどい』の開催方法を変更し、特設サイトによる「オンライン成人式」として開催することを決定し公表しました。
残念ながら筆者は成人式には参加していません。また子どももいないので成人式とは全く関わりがありませんでした。
しかし、筆者は常々、最近の成人式のあり方には若干疑問を持っていましたので、季節はずれとは思いつつ、少し考えてみました。
成人式の主旨と歴史
成人式は日本の法律で定められたものではなく、各地方自治体が自主的に行っている行事です。
成人を祝う儀式は古くからありましたが、自治体が主催する形の成人式は、1946年に埼玉県蕨町(現在の蕨市)で実施した「青年祭」が発祥のようです。
終戦の翌年という混乱の中、次代を担う若者達を勇気付け励まそうと、蕨町青年団が中心となって企画したもので、その意義が評価され、全国に広がりました。
1948年に国民の祝日として「成人の日」が制定されましたが、成人の日の主旨は祝日法で次のように定められています。
成人の日
一月の第二月曜日
おとなになつたことを自覚し、みずから生き抜こうとする青年を祝いはげます。
国民の祝日に関する法律 第二条より
成人の日は1948年の制定から1999年までは毎年1月15日でしたが、ハッピーマンデー制度導入により、2000年からは1月の第二月曜日に変更されています。
なお、元々は、前年の1月16日から当年の1月15日までに20歳になった人を祝う日でしたが、成人の日が固定でなくなったこともあり、現在は前年の4月2日から当年の4月1日に20歳になる人を対象とする、いわゆる学齢制が定着しています。
成人年齢をめぐる変化
成人年齢、あるいは成年は、法律行為が行えるようになる年齢のことで、民法で20歳以上と定められています。
但し20歳未満でも、婚姻していれば一部の法律行為が認められています。
また、2016年6月19日に施行された改正公職選挙法により、以降、18歳以上に選挙権が与えられました。
そして、2022年4月1日に施行される改正民法により、成人の年齢が20歳から18歳に引き下げられます。(但し、飲酒や喫煙は20歳からのままです)
これを受けて成人式の対象をどうするのかは、基本的に各自治体に任せられています。
18歳は受験や就職で忙しい時期に当たることもあり、今のところ従来通り20歳のお祝いとする自治体が優勢のようです。
成人式を取り巻く状況
最近の成人式は、学齢制が定着したこともあり、まるで同窓会の集まりのようです。
なかにはタレントを招いたりコンサートを開いたり、テーマパークを貸し切って行う自治体もあります。
また、理解しがたいことに、新成人の若者が暴れまくる、いわゆる「荒れる成人式」が当たり前のようになっている自治体もあるようで、多かれ少なかれ、成人式本来の主旨は薄くなっているように見えます。
更に、女性は振り袖、男性は紋付き袴といった衣装に拘る風潮もあり、晴れ着の販売、貸衣装、着付け、フォトスタジオなど、新成人をターゲットにしたビジネスも過熱気味で、最近は2年半前の夏頃から予約を受け付けるようになっているとか。
つまり7月のこの時期は、まさに2年半後に向けた成人式ビジネスが動き出すタイミングでもあるのですね。
数年前に起きた「はれのひ」事件は記憶に新しいところですが、あいかわらず新成人ビジネスは盛況のようです。
オンライン成人式の衝撃
新型コロナウイルスがいつ終息するのか、先の見えない状況の中、横浜市が決めたオンライン成人式は、当たり前と言えば当たり前の決断だったように思えます。
しかしこれは、晴れ着を披露する場が失われることを意味しますので、上で触れたように、今や2年先まで予約が埋まっている晴れ着ビジネスに与える衝撃は相当なものでしょう。
年間売り上げに占める成人式関連の割合は、どの業者も少なくないと思われます。
もちろん、晴れ着を予約している方も、キャンセル料が発生する可能性があります。
横浜市では、晴れ着のキャンセル料を補償することも、キャンセルによる業者の減収補償をすることも否定しています。
横浜市のオンライン成人式方式は全国の自治体に波及していくことが予想されますので、今後波紋を呼びそうです。
ですが、コロナ禍の状況を考えれば、結論を先延ばしにしても状況は悪くなるばかりです。
早い段階で決断した横浜市には拍手を送りたいと思います。
今後の成人式はどうなっていくのか
元々、今回のコロナ禍がなくとも、2022年の成人年齢の引き下げを控えて、成人式のあり方の見直しは必須でした。
法律上の意味を失った20歳のお祝いを続けても、やがて衰退していくと思います。
18歳でのお祝いに切り替えたとしても、時期的に参加が難しい人が多いため、参加者は減少していくのではないでしょうか。
政府も地方自治体に丸投げせず、もう一度「成人の日」本来の主旨に立ち戻り、行政として必要なことは何かを考え直して欲しいと思います。
例えば、イベント形式でまとめて成人式を実施するのではなくて、18歳の誕生月にメッセージや記念品を送付するとか…
成人式ビジネスも、個人のお祝い事として捉え直す必要があるのではないでしょうか。
まとめ
筆者の時代はまだ成人式の対象者が学年単位とずれていたこともあり、今のように同窓会のような盛り上がりは全くありませんでした。
成人式の案内は来ていたと思いますが、ハナから出席する気もありませんでしたし、大学の友人達も地方から来ている者が大半だったので、話題にもならなかったと思います。
成人式に参加していないせいか、筆者はフワっといつの間にか大人になってしまった感があります。
しかし、法律的に成人として扱われるようになることの意味は重大で、後になって、お金のことや、契約のことなど、若いときに教わっておくべきだったと思ったことがいくつもありました。
なので、筆者は成人式は不要とは全く思いませんが、成人になる意味と責任をしっかり自覚できるような場として、改めて見直す時期なのではないかと思いました。