経済産業省は5月22日、新型コロナウイルスに有効な界面活性剤を公表しました。
筆者は経済産業省とNITEが実施中の、新型コロナウイルス消毒方法の検証試験に興味を持っていたので、早速内容をチェックしてみました。
経済産業省とNITEが実施中の検証試験
現在、経済産業省の要請に基づいてNITE(独立行政法人 製品評価技術基盤機構)が新型コロナウイルスの消毒方法の有効性評価を実施しています。
これは、家庭や職場におけるアルコール以外の消毒法の選択肢を増やすことを目的としたものです。
まずは文献調査等から、効果の見込めそうな「界面活性剤」「次亜塩素酸水(電気分解法で生成したもの)」「第4級アンモニウム塩」を検証対象物として選定し、ウイルスを用いた検証試験を実施していました。
そして5月21日に第3回委員会が開かれ、検証試験の中間結果が報告されました。
中間報告で界面活性剤が新型コロナウイルスに効果ありと判断
中間報告の中では、これまでに出ている結果から判断して、
・直鎖アルキルベンゼンスルホン酸ナトリウム(0.1%以上)
・アルキルグリコシド(0.1%以上)
・アルキルアミンオキシド(0.05%以上)
・塩化ベンザルコニウム(0.05%以上)
・ポリオキシエチレンアルキルエーテル(0.2%以上)
の界面活性剤5種類は、新型コロナウイルスに有効であるとされました。(これ以外の検証試験については実施中)
そして今回有効と判断された界面活性剤を含む家庭用洗剤のリストが公開されました。
ちなみに広く周知するために ポスター も作られています。
これにより、これまで推奨されてきたアルコール及び次亜塩素酸ナトリウムに加え、新型コロナウイルスの消毒液としてお墨付きの選択肢が増えたことになります。
但し、これらについても身近なものの消毒用とされており、手指・皮膚には使用しないよう注意されています。
なお、界面活性剤については、2003年の時点でSARSコロナウイルスの消毒用として推奨されており、NHKでも紹介されていたことから既に利用している方も多いのではないでしょうか。
電解法以外で生成した次亜塩素酸水を検証試験の対象に追加
筆者が今回の中間報告で筆者が注目したのは次亜塩素酸水に関する記述です。
実はこれまでの検証計画の中で、次亜塩素酸水の検証については「電気分解法で生成したもの」、つまり食品添加物として指定されている、いわゆる「狭義の」次亜塩素酸水に限定されていたのです。
次亜塩素酸水の検証対象については有効性評価に関するQ&Aでも触れられていますが、電気分解法で生成したもの以外の、「広義の」次亜塩素酸水以外については頑なに拒否しているように見えました。
Q3. 次亜塩素酸水について、なぜ電気分解法で生成したもののみを有効性評価の対象とするのですか? A3. 次亜塩素酸水については、委員会での審議を経て、まずは、複数の論文等で抗ウイルス作用が報告されており、食品等の殺菌用として製造装置が各所に設置されている、電気分解で生成された次亜塩素酸水が、評価対象となりました。 検証試験を行う具体的な対象としては、評価対象となったもののうち、強酸性電解水、弱酸性電解水及び微酸性電解水が選定されています。 なお、電気分解法で生成される次亜塩素酸水以外の次亜塩素酸水の新型コロナウイルスに対する抗ウイルス効果の有無は、委員会として検討・判断は行っておりません。 NITEが行う新型コロナウイルスに対する消毒方法の有効性評価について~よくあるお問い合わせ
この検証が家庭や職場での消毒薬の選択肢を増やすことが目的だとしたら、市場の実態を無視した判断としか言いようがありません。
ところが今回の委員会における議論の結果、「今後の検証試験の計画」として、
市場の実態に合わせ、次亜塩素酸水(電気分解法で生成したもの)4 種に加えて次亜塩素酸水(電気分解法以外で生成したもの)を検証試験の対象に追加する。この際、有効塩素濃度と溶液の pH が同等であれば消毒効果は同等と考えられることから、特定の製法で生成された次亜塩素酸水の検証結果に基づいて、他の製法で生成されたものの効果も同等とみなすものとする。 第3回委員会の議論のまとめ
ということになりました。
また関連資料4の「新型コロナウイルスを用いた有効性評価にかかる検証試験において評価対象とする物質」には、
【次亜塩素酸水(電気分解法以外で生成したもの)】
サンプル番号 | 製法 | 原料 | pH | 有効塩素濃度(ppm) |
---|---|---|---|---|
次亜塩素酸水⑤ | 二液混合 | 次亜塩素酸ナトリウム+塩酸 | 5.0~6.5 | 100~300 |
次亜塩素酸水⑥ | 二液混合 | 次亜塩素酸ナトリウム+炭酸 | 5.0~6.5 | 100~300 |
次亜塩素酸水⑦ | 二液混合 | 次亜塩素酸ナトリウム+酢酸 | 5.0~6.5 | 100~300 |
次亜塩素酸水⑧ | イオン交換 | 次亜塩素酸ナトリウム | 5.0~6.5 | 100~300 |
次亜塩素酸水⑨ | 粉末・錠剤 | ジクロロイソシアヌル酸ナトリウム | 5.0~6.5 | 100~300 |
とあり、電気分解法以外で生成したものも対象物質に加えることが明記されました。
まとめ
筆者はジクロロイソシアヌル酸ナトリウム粉末から生成した次亜塩素酸水を毎日使っています。
お墨付きをもらってもやることは変わらないのですが、(広義の)次亜塩素酸水が新型コロナウイルスに効果あると公に確認できれば、より安心できるのかも知れません。
最終結果を待たなければなりませんが、できれば「手指・皮膚には使用しない」という注意書きが付かないことを期待します。でもそれは薬機法上難しいかな…