厚生労働省より公表された公的年金の財政検証結果を読んでみました(その2)

昨日の記事では、今回の財政検証の背景及び試算結果について書きましたが、本日はオプション試算についてです。

オプション試算は今後の年金制度改革の参考となる大事な情報だと思いますので、注目して見ていきましょう。

年金のイメージ写真

Gerd AltmannさんによるPixabayからの画像

なお昨日の記事はこちらです。

www.uwano-sora.com

オプション試算の結果

財政検証では現行の制度のままで今後100年の財政状況がどうなるかを試算していますが、制度改定をした場合の財政状況を試算するのがオプション試算です。

今回の検証では大きく2種類のオプションを試算しています。
オプションAとして厚生年金の適用を拡大した場合の試算、オプションBとして保険料を払う期間の延長や給付開始時期の後ろ倒しの拡大をした場合などの試算です。

前回の財政検証でも同様のオプション試算を実施していますが、今回はさらに踏み込んだ改定内容を仮定しています。

なお、前回オプションにあったマクロ経済スライドの発動ルールを改定した場合の試算ですが、2016年度に制度改定があったため、今回はその制度改定の効果を検証するための参考試算に組み込まれていました。

《オプションA》

オプションAでは厚生年金適用拡大の程度別に3種類試算していますが、最も拡大した場合(月5.8万円以上の収入のある全ての雇用者)だと4ポイント以上の所得代替率上昇効果があると試算されています。

「2019 (令和元)年オプション試算結果」P7

「2019 (令和元)年オプション試算結果」P7

《オプションB》

オプションBでは、以下の4つの改定についてそれぞれ試算しています。

①基礎年金の拠出期間を40年から45年に延長
②65歳以上の在職老齢年金の見直し(緩和あるいは廃止)
③厚生年金加入上限を70歳から75歳に延長
④就労延長と受給開始時期の選択肢拡大

②は改定による就労の変化を考慮していないので、単純に給付が増えて財政が悪化する方向になっていますが、対象者も少ないので財政全体への影響は▲0.2から▲0.4ポイントと限定的です。

同様に③も対象者が少ないと思いますが、やはり所得代替率の向上効果は0.2から0.3ポイントとわずかでした。

①は直接的に財政収入を増やす施策なので当然財政が好転し、7ポイント弱所得代替率が向上します。

「2019 (令和元)年オプション試算結果」P14

「2019 (令和元)年オプション試算結果」P14

④は個人の選択次第とは言え、所得代替率向上効果は絶大です。
70歳まで働いて70から受給すると25ポイント以上、75歳だと39~46ポイントに上ります。
更に①から④までの全てを仮定した試算では、70歳まで働いて70から受給すると30~34ポイント以上、75歳だと54~62ポイント以上にもなります。
ちなみに75歳まで働いてから受給する場合は、所得代替率が100%を超える(つまり現役男子の平均手取り収入額を超える)場合もでてきます。

「2019 (令和元)年オプション試算結果」P20

「2019 (令和元)年オプション試算結果」P20

《オプションA+B》

一応オプションAとBの①から③まで全ての改訂の実施した場合も試算していて、最大で11ポイント前後の所得代替率上昇効果があるとしています。

「2019 (令和元)年オプション試算結果」P24

「2019 (令和元)年オプション試算結果」P24

ここではオプションBの④については計算していません。受給時期の繰下げは受給額への影響大だし、そもそも個人の選択に強く依存する話なので、他とは切り離して議論すべきなんでしょうね。

現在の所得代替率を得るためには

最後に、現在の所得代替率を維持するためは、いつまで働いていつから受給開始すれば良いかが参考として示されています。

これによると、経済前提が中くらいのケース(経済成長率0.4%)だと、現在20歳の世代は66歳9月まで就労し繰下げ受給を選択すれば、現在(2019年度)65歳の世代と同じ所得代替率を確保できる見通しとなっています。

「2019(令和元)年財政検証関連資料」P9

「2019(令和元)年財政検証関連資料」P9

オプションA+Bの改定を前提にすると、65歳10月まで就労し繰下げ受給を選択すれば、現在と同じ所得代替率を確保できる見通しとなり、かなり現実性を帯びてきます。厚生労働省はこの辺りを目標としたいのかも知れません。

結局どうなのか

菅官房長官は、今回の財政検証結果を踏まえて、年金制度見直しに向け検討を進めていく考えを示しました。

どう見直されていくのかは、今回の財政検証で行ったオプション試算で仮定した制度改定が参考になると思います。厚生年金の適用拡大などは企業側の負担増になるので簡単にはいかないと思いますが、はたしてどうなるでしょうか。

注意しなければいけないのは、所得代替率というのは、分母が手取り収入額であるのに対して、分子の年金給付額は手取りではなく、ここから税金が引かれるということ。もちろん掛かる税金は人により違うので年金の平均手取り額を算出するのは難しいでしょうが、いずれにしても実質の所得代替率はもっと低いということですね。

年金の所得代替率は何%なら満足できるのかは人それぞれでしょうが、少子高齢化時代を迎え、年金制度改革にも限界があります。

政府には出生率を上げる努力をもっと真剣に考えて欲しいと思いますが、我々としても働けるうちは働き、できるだけ経済を支え続ける、というのが一番効果があり、社会を安定させる現実的で確実な方策であるのでしょう。

まあ厚生労働省に言われるまでもなく、筆者は人生を楽しむためにも死ぬまで働き続けるつもりでしたけどね。(^_^)/

なお筆者は概要を理解するために、特徴的な試算結果に注目しましたが、実際には膨大なケースの試算結果が提示されています。厚生労働省の関係者の方々ご苦労様です。詳細に興味がある方は是非厚生労働省のホームページにある原資料をご参照下さい。


出典:厚生労働省ホームページ(将来の公的年金の財政見通し(財政検証) |厚生労働省

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