厚生労働省より公表された公的年金の財政検証結果を読んでみました(その1)

今年6月に金融庁が公開した金融審議会 市場ワーキング・グループの報告書に対して、老後資金に2000万円必要と、公的年金への不安をあおるような議論があふれ、世の中が騒がしかったことは記憶に新しいところですが、いよいよ年金行政の本丸である厚生労働省の社会保障審議会 年金部会にて、最新の財政検証結果が報告されました。

年金のイメージ写真

Gerd AltmannさんによるPixabayからの画像

ということで、ちょっと気になったので読んでみました。

財政検証とは

そもそも財政検証とは、国民年金法及び厚生年金法で定められているもので、政府は少なくとも5年ごとに、国民年金・厚生年金の財政の現況及びほぼ100年後までの見通しを作成(いわゆる「財政検証」)しなければならないのですね。

前回の財政検証結果は2014年6月に公表されましたが、5年後に当たる今年は9月27日に厚生労働省から公表されました。

所得代替率とマクロ経済スライド

ちなみに公的年金の給付水準を表す指標として「所得代替率」というのが使われていますが、これは現役男子の平均手取り収入額に対する年金給付額の割合のことです。

年金給付額は物価や賃金に連動して毎年改定されていますが、財政状況(保険料収入と給付額支出のバランス)の悪化が見込まれる場合は、物価や賃金が上昇した場合でも年金給付額の上昇を少し抑えて将来の財源に回す「マクロ経済スライド」という仕組みが発動されます。

「マクロ経済スライド」ってなんだかお堅い名称を付けるので分かりにくいですが、要は将来の年金財政悪化に備えて年金給付額の上昇を抑えるのが目的なので、それが発動されれば所得代替率は下がることになります。

今年度の所得代替率は61.7%で、5年前の62.7%に比べて下がったとはいえ、5年前に予測した数字よりも1ポイント以上高い結果でした。
この5年間で「マクロ経済スライド」が発動されたのは2015年度と2019年度の2回しかなく、それ以外の年は賃金変動がマイナスだったため、ルールに従って発動が見送られたのが主な原因でしょう。
将来を考えると下げるべきだったのが下げられなかったということですね。

2018年度の年金制度改革で、発動できなかった「マクロ経済スライド」の調整分は次年度以降に繰り越すようにルールが変わったため、今年度は2018年度に発動できなかった▲0.3ポイントを含めて▲0.5ポイント調整されたのですが、2016年度と2017年度に発動できなかった計▲1.2ポイント分は反映されずじまいだったようです。

この辺りの状況をまとめた資料が見当たらなかったので、毎年の厚生労働省の発表資料から表にまとめてみました。

年度 物価 賃金 調整※ 年金額改定
2015 +2.7% +2.3% ▲1.4% +0.9%
2016 +0.8% ▲0.2% (▲0.7%) 据え置き
2017 ▲0.1% ▲1.1% (▲0.5%) ▲0.1%
2018 +0.5% ▲0.4% (▲0.3%) 据え置き
2019 +1.0% +0.6% ▲0.5% +0.1%*

表:過去5年の年金額改定状況
(※ マクロ経済スライドによる調整率/2015年度は特例水準の解消▲0.5%を含む/( )は発動されず)
* ▲0.1%から訂正しました 2019/9/11

ということで、いずれにしても少子高齢化時代を迎えて、所得代替率は今後も下がっていくことが予想されています。

検証の結果

今回の財政検証では、試算の前提である経済成長と労働参加状況について6つのケースを設定して2115年度までの見通しについて試算する他、前回同様、オプションとして保険加入者拡大、加入期間の延長、受給開始時期の選択肢拡大などの制度改定を実施した場合の試算も行っています。

まずは6つのケースでの試算の結果ですが、所得代替率は、最も楽観的な前提(実質経済成長率0.9%)のケースで2046年度に51.9%に到達し、以降は2115年まで維持、最も悲観的な前提(実質経済成長率▲0.5%)だと2043年度に50.0%に達し、最終的に2052年度に46.1%となり、以降は2115年まで維持、となっています。

但し所得代替率が50%を切る場合は、保険料を見直すなど何らかの対策を打つことになっているので、実際には50%より下がることにはならないはずです。
(所得代替率50%を確保するというのが政府の「年金100年安心プラン」の目標なので・・・)

「2019(令和元)年財政検証結果のポイント」P3

「2019(令和元)年財政検証結果のポイント」P3

つまり現状の制度のままでは、低成長経済が続くと最悪24年後には所得代替率が50%を切りまっせ、という報告なわけですが、5年前は最悪22年後には、と言っていたので、若干改善したと言えるのかも知れません。

ただ、先日の老後2000万円必要祭りであきらかになったように、所得代替率50%を維持すれば安心、なんて思っている国民はもはやいないはずで、特に今の若い世代の人達は、自分たちが年金を貰うときは実質で今より2割くらい目減りする、なんて聞いたら益々年金不信に陥りますよね。実際には寿命も延びるので、受給総額で見るとそこまで目減りしないかも知れないのですが…

ちょっと長くなっちゃったので、オプション試算については記事を分けます。


出典:厚生労働省ホームページ(将来の公的年金の財政見通し(財政検証) |厚生労働省

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 * が付いている欄は必須項目です