何年か前、機本伸司の「神様のパズル」(ハルキ文庫)という小説を読んだ。2002年の第三回小松左京賞受賞作だ。飛び級の天才少女が、自ら設計した粒子加速器で、落ちこぼれ大学生とともに宇宙を作ることに挑むという内容。本の装丁はライトノベルそのもので、設定もそれっぽいが、内容はしっかりしたSFに仕上がっていて、とても面白かった。2008年に映画化されていたのだが、今回ようやくDVDを見た。
映画の方はこれはこれで面白かったのだが、設定は少し小説と違うところがあり、作りもドタバタコメディ風なところが少し不満だ。宇宙は本当に「無」から生じたのかという難解な内容をエンタテインメントとして表現するという苦労は伺えるのだが。私としてはこのテーマで2001年宇宙の旅のように哲学的で真面目なハードSF系の作りのものを見てみたい。
ダン・ブラウンの小説「天使と悪魔」でも粒子加速器と宇宙開闢の話が出てくる。宗教と科学の決定的な争点のひとつである「創造論」を巡って、CERN(欧州原子核研究機構)の研究者が無から物質と反物質を生成する実験に成功したことから事件が始まるのだが、宗教と科学の歴史的な対立を背景とした、SF好きもワクワクするような小説だ。
最近話題の映画の方はまだ見ていないが、宇宙開闢という人類究極の謎をどう表現しているのだろうか。あまりに大きな謎のため、へたに映像表現すると安っぽくなるだろうし、話のメインテーマではないのであまり期待してはいないが。いずれにしても小説は面白かったので映画もぜひ見てみたい。